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マーケティング

このストロー、ひと回り太いのはなぜ? ~おいしさが細部に宿る商品開発~

太さへのこだわりがおいしさにつながる

シェイクはアメリカンスタイルのミルクセーキで、ハンバーガーショップなどでおなじみのメニューの一つですね。飲みものというには濃縮性が高く、必ずしもストローで吸い込みやすいものではないのですが、その吸い込みにくさがまた魅力だったりもするので、不思議です。

その微妙な加減が、実はストローの直径から計算されていることをご存知ですか。ストローをあの太さにした理由が、日本マクドナルドの創業者の著書に書かれています。それによると、人間が口の中にものを吸い込むときに最もおいしいと感じるスピードは、赤ちゃんが母乳を吸うスピードなのだそうです。そのスピードで吸い込むのにちょうどいい太さに、あのストローは作られているということです。

太さへのこだわりといえば、カップ麺の麺についても同じような工夫がみられます。日清食品のカップヌードルやシーフードヌードルは、麺の直径が2mmです。これに対して、同社のカレーヌードルの場合、実は3mmとかなり太くなっています。カレーヌードルの麺の直径を他のヌードルの1.5倍にしているのは、なぜだと思いますか。その理由は、スープの違いにあります。カレーヌードルのスープは、他のヌードルに比べて粘り気が強く、味も濃いものになっています。意外に思われるかもしれませんが、麺は太いほどスープが絡みにくいのです。麺を太くしてスープを絡みにくくすることによって、カレーヌードルの味がちょうどいい濃さになるように調整されているのですね。

複数の異なる感覚の間の相互作用を活用する

シェイクのストローやカレーヌードルの麺の太さへのこだわりは、人間の味覚を左右する物理的な側面に注目するものです。一方、味覚を左右するものには心理的な側面もあります。気のおけない仲間と会話が弾む食事では、そこで食べたり飲んだりしたものもおいしく感じられることでしょう。反対に、緊張して臨んだ会食では、そこで食べたり飲んだりしたものがどんな味だったのかさえもよく覚えていないという経験が、みなさんにもあるのではないしょうか。

味覚以外の感覚による情報が、味覚を左右する場合もあります。甘い味や塩味のポップコーンを色の異なるボウルに入れて試食させるという実験が行われたことがあります。その結果、塩味のポップコーンであっても赤や青のボウルに入っていたものについては、甘く感じられる傾向があることがわかりました。ほかにも、食器の材質、さらに試食させる空間の照明によっても味覚が異なるという実験結果を伝える研究報告も知られています。

味覚が視覚によって影響されるように、特定の感覚がそれとは別の感覚によって影響される作用、別の言い方をすれば、複数の異なる感覚の間で生じる相互作用は、多感覚相互作用とよばれているものです。パン屋さんの前を通りかかって焼き立ての香りを嗅いだだけで食欲がそそられるのは、味覚が嗅覚によって影響される相互作用の一例です。また、ビールなどのコマーシャルがのど越しの音を強調するのは、味覚が聴覚によって影響される相互作用を活用している一例です。

多感覚相互作用の視点から繁盛店やヒット商品を見直してみると、その成功の秘密が少しは見えてくるかもしれませんね。

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