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データサイエンス

ポイントカードのメリットは割引だけ? ~ポイントカードは情報の宝庫~

ポイントカードはお店にとってメリット大

「ポイントカードはお持ちですか?」・・・レジでよく聞かれますね。
「カード会員の方は5%引き」や「土日はポイント10倍」など、会員にとってお得なカード。みなさんは、割引やポイント付与だけがポイントカードのメリットだと思っていませんか。
このポイントカード、実は、お店側にとって、とても大きなメリットがあります。割引ばかりすると儲けが少なくなるのではないか、システム導入・維持の費用は大丈夫か、など、お店のことが心配になりますが、会員になった人が割引に誘われ足繁く来店してくれたり、ポイントを使うために他店よりこちらのお店を選んでくれるといったメリットがあることには気づくでしょう。しかし、それだけではないのです・・・。

ある小売チェーン店では、約60種類のパンを一定期間ごとにその半数を入れ替えます。いつものように売上額が低い30種を入れ替えようとしていました。すると、データ分析チームから、売上順位40位の菓子パンの入れ替えに対して「待った」がかかりました。
「この菓子パンは、わが社のオリジナル商品で、20代後半から30代の女性が頻繁にリピート購入しています。この女性たちは、パン以外の商品も同時にたくさん購入していて、全体の売上に貢献しています。もし、この菓子パンの販売を中止すると、この女性たちが来店しなくなり、全体の売上が落ちることになります。」
と言うのです。その根拠となったのが、ポイントカードの購入履歴データ。ポイントカードをレジに通すと、そのカードIDの持ち主が買った商品がID番号とともにサーバーに記録されていきます。この蓄積された膨大なデータ(ビッグデータ)を用いて、その菓子パンを買った層(性別や年齢など)や、一緒に買ったもの、支払い総額などを調べていくと、その菓子パンを買う人には女性が多く、かつ、ある特定の年齢層にリピート購入者が多いことがわかってきたというのです。さらに、この層の人たちは他に何を一緒に買っているか、1回の買い物の支払い総額はいくらか、などを掘り下げていった結果、先のような傾向がわかり、「販売は継続すべし」というアドバイスに至ったのです。
もちろん、この小売りチェーン店は、この菓子パンの販売を続けました。売上順位しか見ていないと大損をするところでした。

こういった商品の売れ方や消費者の行動を購入履歴データから分析できることがポイントカード活用の大きなメリットです。ほかにも、合わせ買いの傾向をデータから分析し、店頭での声掛けや商品陳列を工夫したり(これに関しては、データサイエンスminiレクチャーの第1回「ごいっしょに、コーヒーはいかがですか?」およびその動画版も見てください)、個人情報を取得していれば、新商品や特売セールの情報をダイレクトメールとして送ったりすることができます。お客さんにとっても「痒いところに手が届く」サービスを提供してもらっていることになりますから、お客さんとお店の間のギブアンドテイクが成り立つシステムということができます。そうそう、ネットショッピング、「この商品を買った人はこれも買っています」などなど、まさに購入履歴データ活用の最たるものですね。

ポイントカードにだまされない・・・でもお客さんを大切にしている

ここで、問題を1つ。

  購入金額の10%分がポイントとして還元される場合、何%引きでしょう。

  答:9.09%引き

あれ? 10%引きではないの? と思ったのではないでしょうか。次のように考えます。
1,000円の品物を買うと、その10%である100円分のポイントが還元されます。次の買い物で、このポイントを使って100円の品物を買ったとします。すると、1,000円出して、合計1,100円の買い物ができたことになります。言い換えると、1,100円の品物を1,000円で買ったということです。つまり、1,100円の商品を100円値引きしてもらったことになりますので、値引き率は、
   100 ÷ 1,100=0.09090909・・・
となり、9.09%引きが正解ということになります。
ちなみに、このポイント、多くの場合、有効期限があります。使い切らずに失効したポイントはそのままお店に残ることになります。お店側に失効したポイントがたくさんあれば、その分、売値の値下げにも反映させることができます。
一見、消費者をだましているように見えても、実は、消費者のことを考えた顧客囲い込みの手段となっているんですね。ポイントカード、よくできた制度です。

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